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2024/07/03

「台湾のサーキュラー・ソーシャルデザインに会いに行く旅」1日目 DIOが目標とする台湾デザイン研究院にてサーキュラーエコノミーを学ぶ

このたび、社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」を運営する株式会社ハーチさんが主催するツアー「台湾のサーキュラー・ソーシャルデザインに会いに行く旅『Repair Our Futures〜つなぎ直す未来〜』」にDIOメンバー全員で参加しました。

台湾では1974年に廃棄物清理法(廃棄物処理法)が制定されて以来、廃棄物の削減やリサイクルなどの取り組みが法整備を含めて推進されてきました。基盤が整備され、経済や安全保障の点からも必要に迫られていることを背景に、官民一体となった“サーキュラーエコノミー”への移行対応が急速に進められています。

今回の旅では、3泊4日の行程で、ソーシャルデザインを実践する台湾の10の企業や団体を訪ねました。旅のテーマは「Repair Our Futures〜つなぎ直す未来〜」。果たして、“つなぎ直される”のは、地球なのか、環境なのか、それとも、人の心なのか…。

台湾同様、面積も小さく、資源も限られているここ沖縄で、何かヒントになる取り組みがないか、ワクワクしながら旅の初日を迎えました。

【1日目 視察先】

1.台湾デザイン研究院(TDRI)

2020年に設立された台湾の政府系デザイン振興機構(前身は2004年に設立された台湾デザインセンター)。デザイン主導のイノベーションを通じて台湾の国際競争力を高め、持続可能な社会と産業の発展促進、ライフスタイルの向上を支える活動を推進しています。デザイン人材の育成、企業とデザイナーのマッチング、デザインアワードの運営や公共・産業・社会デザインプロジェクトなど、その活動は多岐にわたります。

【台湾デザイン研究院(TDRI)での学び】
・サーキュラーエコノミーの推進には“共創”と共通目標が不可欠
・サーキュラーデザインの推進と人材育成のためにアワードを活用

台湾デザイン研究院がオフィスを構えるのは、台北市内の「松山文創園区」といわれるエリア。オフィスが入居するビルは、かつて専業タバコ工場として近代工業建築の先駆けだった建物です。

2001年に市の史跡に指定された後、空間再利用により、芸術文学・文化創意・デザインなどのパフォーマンス活動と連動、デザイン・文化創意産業の基盤拠点となりました。リノベーションされた空間、入居している店舗や並んでいる商品もデザイン性が高く、素敵な空間です。

当日は、シニアマネジャーのTsuei(崔)さん、ディレクターのVivianさんによる、台湾デザイン研究院の歴史、取組に関するプレゼンテーションを拝聴。

台湾デザイン研究院は2016年頃からサーキュラーエコノミーに関する研究を進めてきましたが、法規制、市民や企業の理解不足などの課題、また、国の中でも省庁ごとに目標が異なることが、サーキュラーエコノミー(サーキュラーデザイン)推進の妨げになっていることを認識し、国は2023年に「環境部資源循環署」という部署を新設するに至りました。これまで関心や目標が一致しなかった各省庁が同じゴールに向かって活動することができるなど、ドライブしている感が出てきたそうです。

そして、2018年に政府が主催する「GOLDEN PIN DESIGN AWARD」の中に「サーキュラーデザインアワード」を設定し、一般部門だけでなく学生部門を設けることで、早い段階からサーキュラーデザインに対する思考を育もうとしている点に、デザインをソフトパワーと位置づける台湾ならではの姿勢を感じることができました。

デザインをイノベーションの要として重視する台湾のデザインポリシーや、具体的な取り組み内容などから、台湾がソフトパワーとして位置づけるデザインのベースを学びました。

2.Miniwiz(ミニワイズ、Trash Kitchen)

「ゴミの持つ無限の可能性を世界に示す」をミッションに、廃棄物を高性能耐久建築製品の代替品に生まれ変わらせることで、気候変動の課題に取り組む企業。台湾国内のみならず、日本のNikeLabやニューヨークのNike本社オフィス、ジャッキー・チェンの上海オフィスなど、世界中でリサイクル建材を用いた構造物のプロジェクトに取り組んでいます。2005年の創業以来、1,200以上の独自の建材を開発しています。

Miniwizでの学び】
・使い捨てプラスチックゴミを価値のあるものに変える
・今後、サーキュラーエコノミーでインパクトが出るのは、アフリカとインド

今回はMiniwiz創業者・Arthurさんのプレゼンテーションを聞き、彼らが運営する「Trash Kitchen」にて、ごみを3分間で製品に変えるシミュレーションを見学しました。

プレゼンで印象的だったのは「きれいなごゴミを、できるだけ早く集めることが大事!」という言葉。“きれいなゴミ”ほど安く、かつリサイクルできる幅が広くなるそう。

その後、「Trash Kitchen」にて、2021年に「World Design Impact Prize」を受賞した「TRASHPRESSO」のデモンストレーションを体験。「TRASHPRESSO」は使い捨てプラスチックゴミを価値のあるもの (建築資材、食器、メガネ・サングラスなど) に変える、Miniwizオリジナルの機械です。ヨーグルトの容器などのプラスチックゴミがメガネやサングラスに変わっていく工程を目の当たりにして、参加者一同、衝撃を隠せませんでした。

Arthurさんは「日本が羨ましい」とも口にしていました。台湾と違って日本はさまざまなものに文化的背景、歴史、イメージがあるといいます。「日本はもっともっと発信したほうがいい! 文化的優位性があることを自覚すべき」とエールをいただきました。

終盤にはサーキュラーエコノミーの今後についても言及。Arthurさんによると、2060年頃にインパクトが大きくなりそうなエリアはアフリカやインドだそう。Miniwizは台湾にとどまらず、現在でも世界を見て活動をしています。

【1日目を終えて】

台湾デザイン研究院は、自らの価値創造について「デザインによる外交」を掲げていました。「国際デザインコラボレーションネットワークの構築」「台湾のトップデザインチームを育成する」、そして、「台湾デザインの国際的な認知度を高める」など、その施策も具体的でした。「デザインによる外交」はまさにDIOが沖縄で実現したいことと重なり、メンバー一同、とても深い学びとなりました。

2023年3月、日本も経済産業省から「成長志向型の資源自律経済戦略」が発表されました。沖縄も例外なくこの歩みをともにしていかなければなりません。これからもサーキュラーエコノミーの推進とソーシャルデザインの実践に向けて、学び続け、実践を積み重ねていきたい、と旅前の決意を改めて実感した次第です。

次回は、2日目の視察内容をお伝えします。

写真:(C)KENICHI SASAGAWA